● 入 社 編 ●(第一話)
当時よいこ不動産(仮名)は、本社以外に支店が5つあり、この地域では
大きい部類の会社でした。
面接は本社で行われ、感じのいい「人事部長」なる方が面接をしていただき
、話はトントンと進みその場で入社が決まりました。
この時、会社の雰囲気を見学しなかったのが私の失敗でした。

後日私は、気合をいれ本社に出社する。
そのとき「人事部長」なる方から、「君は守口支店に配属が決まったから」と
守口支店の店長、山本部長(仮名)を紹介してもらいました。
その方はパンチパーマで目つきも鋭く、縦じま模様の派手なダブルのスーツ
を着こなし、とても一般素人の方には見えませんでした。
(私は、この時はちゃんと刈り上げつきのリクルートカットです。)
私は一瞬びびってしまいましたが「は・・はじめまして、このたび入社しました
富山と申します!」と元気よく挨拶をしました。
するとその山本部長は「よっしゃ!ほな行こか!」と黒塗りで真っ黒の
スモークガラスを貼ったクラウンに載せられ、いざ、守口支店へ・・・

守口支店は駅近くのビルの1階にあり、人通りも多く、立地条件は抜群だと
思いました。店の中は15坪ほどの広さで、けっして広いとは言えないが、
小奇麗な感じがした。
店に入るなり山本部長が「おまえらぁ~、新入り、紹介すんど~」と、
私は・・新入り?・・って、と思いましたが、事務所の中を見渡すと、そこには
4人の営業マンが「
おざ~いっす!!
(多分、おはようございます、といってる)
と一斉に柄の悪い音質が響きました。

皆さん見事にパンチパーマで様々な柄の悪いダブルのスーツを着ていました。
私は心のなかで「これは・・・マズイところに来たな・・」と思いましたが、
とりあえず様子をみる事にしました。
これも経験のひとつだ、と言い聞かせるように・・。

そーこーしている内に、「君、ここの席ね」と私のデスクを指定され、
「2~3日、ぼーッと座ってるだけでいいから、最初は雰囲気に慣れて」
といわれました。
チラッと顔を上げると、諸先輩の営業マンの方々が好奇心の目で
私を見ています。
すると向かいに座っていた先輩(田山係長・仮名、年齢40歳位)が、
「兄ちゃん、富山っちゅー名前やったな、ほな、今日から”富ちゃん”やな」
と言われました。
と・・・富ちゃん?・・・私は目が点になりましたが、いきなりあだ名が付けら
れました。そのあと、諸先輩の方々からの質問攻め「彼女おるんか?」
「どこの出身や?」「おんな紹介してや!」「歳、なんぼや」などなど、
意味の無い質問に適当に答えていました。

すると1人だけずーっと黙っていた斜め向かいの先輩(横田課長・仮名・
パンチパーマしか似合わない、すっごい怖い顔)が、ドスを聞かせた声で、
私にこう言った「富ちゃん、あしたパンチにしてこいや!」と、
パ・・パンチ?さすがに私は反論した(びびりながら)「パンチパーマが営業
になんの関係があるのですか・・?」、するとその怖い先輩は間髪いれずに
「あほんだら!関係あるんじゃい!おまえみたいな、しょぼい髪型してると、
客になめられるんじゃい!この商売、客になめられたら終わりなんじゃい!!」
と一喝、正直私はこの時、軽い目まいがしました。
しかし、どうしてもパンチパーマをしたくなかった私は再度勇気をふりしぼり、
「何を言われようと、パンチパーマなんかしませーん!!」と反論しました。
そのときの私の顔は、多分・・、半泣き状態だったと思います。
そのとき、山本部長が助け舟?を「まぁ~ええがな、本人も嫌がっとんやし、
まぁ、パンチの件はその内に、な、な」と、横田課長をなだめていましたが、
私は・・その内・・とはどーゆー事やと思いながら、パンチパーマは絶対にしないと
心に深く誓うのであった。

と、まぁーこんな感じで、私は約1年間ここで仕事をすることに。前途多難な
会社経験をする
のであった。

●(第二話)へと続く・・・

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